平熱通信

妄想癖、心配性、よそみがち。

ひみつ作戦決行日。

トイレを出たところで気を失い、そのまま倒れて壁に顔面をぶち当てて唇から出血しながら崩れ落ちるという、なかなかドラマチックな体験をしてしまった。

家族の話では、目を覚ました後、「トイレちゃんと流したっけ」と言い残し再度気を失ったらしい。その後目を覚ますことができて本当によかったと思う。もしもそのままだったら、辞世の言葉が、
「トイレちゃんと流したっけ」
になるところだった。

転倒時に頭を打った可能性があるし、顔面にやや痛みが残っていたので、近所の総合病院でCTスキャンをやってもらった。人生初CTスキャンである。
装置のおおげさなデザインといい、寝そべった寝台が微動しながら動く様子といい、低くうなる動作音といい、なんともSF感あふれる体験であった。
目を閉じた状態で寝台に横たわり、そのままトンネル状の装置に寝台ごと入っていくので、詳しい状況はよくわからないが、装置の中に進入するにつれてうおんうおんという動作音が大きくなり、頭頂部方向から白い光につつまれていくという演出は、「やばい、オレ、時空を越えてしまうかも」と思わせるエモさがある(いや、演出ではないか)。実は今回の転倒失神事件で唯一楽しみだったのがこのCTスキャン体験だったのだ。以前から、いつか機会があればあの装置の中に入ってみたいという興味はあったのだが、やりたい時にできるという類の体験ではないので、生きてるうちに一度はやってみたい、と常々思っていたのである。
とはいえ、初診料を含むとはいえ9000円近い搭乗料金(搭乗料金?)に見合うほどのエキサイティングな体験かと言われればそこまでではないな、というのが正直な感想だ。まあ、そもそもCTスキャンはそういう用途で作られたものではないので、当たり前と言えば当たり前の話である。
ちなみに、スキャンの結果に特に問題はなかったらしい。トイレでの排泄行為の後、血圧が急に下がるんだかなんだかで貧血状態になり、それが失神の原因になることがあるのだそうだ。

それにしても、今年に入ってから病院というか、医療な感じ(?)のところにばかり行っている。つまりライク・ア・医療だ(今、自分で自分が何を書いているのかよくわからなくなった)。

今回のCTスキャン体験は突発的な出来事であったにしても、僕の手帳のスケジュールのページに書いてある予定は通院とか人間ドックとかワクチン接種とか、医療な感じのイベントばかりだ。ページの端にかかれている電話番号は春から新しく通う病院の予約用電話番号だし、飼い犬の名前が書いてある日は動物病院に薬をもらいに行くことになっている。

体の壊れた部分を治すために病院に行くこと自体はとても大切な行動だとは思うのだが、ちょっと違った風合いのスケジュールも書いてみたいよな、というようなことをふと考えた。
そこで、しばし思案した後、とりあえず明日の予定のところに、
「ひみつ作戦決行日」
と書いてみた。ちょっと気持ちが高揚するかと思って書いてみたのだが、もちろんこれといって具体的な予定はない。ただ、書いた文字を眺めていると、かすかにうきうきと気持ちが持ち上がってくるような気がしないでもない。

はてさて、明日は何をしたものか。