平熱通信

妄想癖、心配性、よそみがち。

満員電車の過ごし方。

僕は満員電車があまり得意ではなく、その為に電車が混む前に出勤するくらいの工夫はする人間なのである。

とはいえ、その程度の工夫では対応できないほどのアクシデントは時々あるもので、久々に、前後左右からぎゅうぎゅうと押し込まれるような電車に乗ることになってしまった。持っているカバンから手を離しても落下しないというあの状態だ。

強く押し込まれるこの力をうまく利用すると、マッサージのかわりにならないだろうか。疲れが溜まってかちかちになった腰を、より強く押し込んでくる力の方に向けたりしたら、いい具合のところがぐいぐい押されてリフレッシュ、などということはないだろうか。
……というようなことをぐいぐい圧迫されながら考える。この体勢では、本を読むこともスマートフォンを触ることもできないので、考え事をして時間をつぶすしかないのである。

考え事にも飽きた頃、ふと、最近マンモグラフィー検査を受けた知人から聞いた感想を思い出し、盛大に思い出し笑いをしてしまう。

「マンモグラフィーは、肉まんを左右から挟んで、厚めのナンにするものでした」

周囲の乗客何人かが冷ややかなまなざしを向けてくるが、残念ながら逃げ場はない。

これだけぐいぐいと押されてるのだから、僕もナンに近づいているかもしれない。いや、前後左右から圧迫されているから横方向には伸びる余地がない。ならばせめて、押し込まれた分、身長が伸びたりしないだろうか。ただ、強く圧迫されるのは上半身のような気がするので、身長が伸びたとしても胴ばかりが長くなるのかもしれない。これはあまりいただけない事態だ。

……というように、満員電車の中では、考え事をして時間をつぶすしかないのである。