平熱通信

妄想癖、心配性、よそみがち。

ノート

空気吸うだけ。

今年の1月2日が実は振替休日だということを知ったのは、1月4日水曜日のいわゆる仕事始めの日であった。 仕事机に置いてあるカレンダーにそのように記載されているのを見て、なんとも不憫な気持ちになったのである。 こんなにもかわいそうなことがあるの…

コズミック・ベロシティ。

今日はわりと過ごしやすい。 暑くもなく風もあり、窓を開けていればいい具合の風も入ってくる。小さい音で音楽を鳴らし、床に寝転がり、うだうだとどうでもいいことばかり考えて過ごしてやった。 考え事の合間には、最近、最新刊を買った『ダンジョン飯』の…

ひみつ作戦決行日。

トイレを出たところで気を失い、そのまま倒れて壁に顔面をぶち当てて唇から出血しながら崩れ落ちるという、なかなかドラマチックな体験をしてしまった。 家族の話では、目を覚ました後、「トイレちゃんと流したっけ」と言い残し再度気を失ったらしい。その後…

胸部にまつわる10年史。

仕事が一区切りつき、ぬるいコーヒーを飲みながら東ハトのハーベストをかじっていた時のことである。 仕事部屋(兼寝室)のドアが少し開き、室内の僕が休憩していることを確認するくらいの間が開いた後、娘が「ちょっといい?」と言いながら入ってきて、僕の…

歯医者さんにはかなわない。

何日か前のことだ。仕事中に突然、口の中で「めき」というような音がしたのである。舌で確認すると、奥歯がよろよろと揺れているような感触があった。口の中に指を突っ込んで、軽く触れてみると「ぐら」という感じでたやすく動く。 あわてて歯医者の予約を取…

夏の扉。

髪を切った。 自慢ではないが、僕の「髪を切った」は、そんじょそこらの「髪を切った」と同じにされたら困っちまうぜ、というくらいの「髪を切った」なのである。 つまり、本当に「髪を切った」だけなのだ。 そこには、頭髪の量を調節し、形を整え、最終的に…

そんなことよりナッツトゥユー。

仕事で使っているメガネが見えにくくなってきたので、近所の大型スーパーに入っているメガネ屋に行くことにした。まあ、メガネの調子が悪くてメガネ屋に行くのだから、これ以上ないくらい当たり前の話だ。 これが、「仕事で使っているメガネが見えにくくなっ…

トイレ道。

ついさっきのことだ。 リビングにあるパソコンをいじっている時に、娘に、「トイレ入ってたよね。ウンチ目的で」と聞かれたのであった。 それはたしかにその通りだったので、そのように返事をしたところ、娘は、 「やはり、正解率100パーセントだ……」 とつぶ…

4月ですから。

先月末のことだ。 リビングの壁に貼ってあるカレンダーを見ながら、「そろそろ4月だねえ」とつぶやいたところ、それを聞いた娘に、 「おそろしいことを言うなっ!」 ……と、一喝されたのであった。 4月になれば新学期がはじまり、新しい授業新しい先生新しい…

手のひらに鼓動。

自宅にいる時間が長くなり、その上、ベッドに横たわっている時間が増えるにつれて、犬と一緒にいる時間もどんどんと増えている。 在宅勤務になって、自宅であるにも関わらず、今までわかっていなかったことにいくつも気づいたものだが、その中のひとつは、「…

省エネ大賞個人部門。

ああ、はい。そうです。たしかに受賞しました。 いや、たしかにね、僕も意外だなあとは思ったんです。あれって、なんというか、人間がもらう賞だと思ってなかったんで。 でもね、先週、現に電話がかかってきて、担当の方が、「おめでとうございます! あなた…

静物。

久々に髪を切りに行く。 その後、近くのショッピングモールに入っている本屋で西村ツチカの『北極百貨店のコンシェルジュさん』2巻を買う。 帰宅してから少しづつ読み、読み終わった時には夜になっていた。それほど厚い本でもないのだけれど、休憩をはさみ…

スキカキらいかデイウト。

「好きか嫌いかで言うと」 そう彼女が言ったような気がした。 いや、正確には、 「貴方のことを、好きか嫌いかで言うと」 と言ったような気がしたのだ。 僕はおおいに驚いて、画面の向こうの彼女に、その旨を確認した。 今、僕のことを、好きか嫌いかで言う…

彼女が本当は欲しかったもの(ケンタッキー・フライドチキンにて)。

朝、自宅を出る時は肌寒かったのに、診察が終わって病院を出た時にはすっかり暖かくなっていて、自宅の最寄り駅に着くころには少し汗ばんでいた。 さっき寄り道したある商業施設のエレベーターよりも、昨日行った会社のエレベーターよりも、病院のエレベータ…

夕焼け小焼けを聞きながら。

10月になって少し残念に思うのは、毎日夕方になるとどこからか聞こえてくるチャイムの時間が変わったことだ。 『夕焼け小焼け』のメロディにのせて、外で遊んでいる子供たちにはやく帰ることをうながすそのチャイムは、9月までは5時半に流れていたのだ。それ…

大いなる愚者の小さな作戦。

……だから、さっき仕掛けておいた例の装置がそろそろ動きだす頃だろう。そうしたら連中、きっとあの大きな門に殺到すると思うのさ。そうなれば我々としては、がらんどうになった大広間にずらり並べられたごちそうの数々を、端からぺろりと味見させていただく…

彼女が好きなナンバー8。

どこかの家の中から、テレビの音が聞こえてくる。 おそらくそれはニュース番組で、明瞭な男性の声が、 「感染の拡大が続く東京で……」 と言っている。 僕は犬(女子)と朝の散歩中で、思わず彼女に「映画かなんかシーンみたいだね」と言ってみる。 まだ七時前…

雨の中、トイプードルが仁王立ち。

夜中にふと目が覚めて、はてなんでまた今このタイミングで目が覚めたのだろうなどと思う間もなく、寝室がびりびりと震えるほどの轟音である。 その後、カーテン越しでもしっかりわかるほど空が光り、その数秒後に轟音、という組み合わせが3セットほど続き、…

あなたがいるなら。

ふと気づくとまるまる五日ほど外に出ていないということに気づき、たまたま雨がやんでいたので散歩をしてみた。時刻はだいたい19時くらい。またいつ雨が降ってきてもおかしくない空模様だったけど、傘は持たずにウチを出た。もしも雨が降ってきたら小走りで…

僕はいろいろ言葉にできない。もしくは、ゾンビがいないというだけで。あるいは『デッド・ドント・ダイ』。

いや、もう前売り券を買ってあったから、今回はしょうがない。 ……とかなんとか自分に言い訳をしつつ、映画を観に行く。 会社から、外での飲酒や映画館、イベント会場へ近づくことを自粛するよう言われているのだ。もちろんそれは強制ではなく、「自粛するよ…

眠れぬ夜のために。

なんだかよく理由はわからないけれど、どういうわけか眠れない夜がある。 眠れないとはいえ体にはまだ前日の疲れが残っている。だからたとえばむくりと起き上がって本を読むとかパソコンのスイッチを入れるとか、そういう気力はまだチャージされていない。そ…

「あーあ」(もしくは、感染してもしなくても)

この時期の繁華街を見ておきたい。 新しいウイルスのことを意識して、それに触れぬよう静かに息をひそめて生活しているというのが今の生活であり、これは間違いなく僕のささやかな人生の中でははじめての経験だ。この状況がいつまで続くのかわからないけれど…

不要不急の頭髪だけど。もしくは、緊急事態宣言下で髪を切る僕の方法。

そろそろ髪を切ったほうがいいかもしれぬ、などと思いつつ、ついついだらだらと過ごしていたら緊急事態宣言が発表され、「不要不急の外出」と「ぼっさぼさになった頭髪の手入れ」がイコールで結ばれてしまうものなのかどうか思案しているうちに五月になって…

翼をください。

先月から続いていた自宅待機状態がやや緩和され、週何日か出勤することになった。ざっくり計算すると、自宅待機率八割減だ。 ふりかえってみると、ゴールデンウィークをはさんでいるとはいえ、この一か月の間に二日しか出勤していない。これは間違いなく社会…

マリー・アントワネット作戦。

もしかしたら、源氏パイとチップスターがあれば生きていけるのではないか。 緊急事態宣言が発表され、自宅待機生活に突入してしばらく経った頃、僕はそんなことを考えていたのだ。 それはつまり、近所のスーパーから米やらパスタやらパンが消えていた時期で…

#トイレットペーパー買い占めました。

「#トイレットペーパー買い占めました。」 ……というコメントを読んだ私はどう反応すりゃいいのさ、と娘に言われたのは何週間前のことだっただろうか。 ここのところどうも時間の把握がうまくできなくなっているような気がする。時々、つい最近の出来事がやた…

待機と雄たけび。

朝の5時から7時台に犬の散歩をする為に外出する。時間にばらつきがあるのは天気や犬の機嫌によって出発時刻を変えるからだ。今、僕が外出するのは基本的にこの時間帯だけになっている。 ただ、週に一度くらい、夕方の買い出しを手伝うことはある。重たいも…

緊急事態と赤い月。

朝、会社に行こうと自宅を出て、しばらく歩いてからマスクをしていないことに気付く。 時間にそれほど余裕はなく、マスクを取りに帰ったらそこそこ本気で走らないといつもの電車に乗ることはできない。いつもの電車に乗れないということは始業時刻に遅れる可…

カメラとトーク。‐そしてすべてわかるはずさ‐

今、通勤している現場では、三年に一度、入館証の更新を行う。 入館証には氏名会社名が印刷されそのそばには顔写真が添えられている。写真は更新の度に新たに用意するのだが、事前に申し込めば先着数十名は管理課の職員が撮影してくれる。それを逃すとスピー…

腰痛にトイプードル。

ある平日の朝、目が覚めた僕は、「これは大変なことになったぞ」と思ったのであった。 まずは体が動かない。いや、動かそうと思えば動かせないこともないのだが腰から激痛が走る。前の日の午後、仕事中に突然腰が痛くなり、一晩経過し朝がきて、僕の身体は起…