平熱通信

妄想癖、心配性、よそみがち。

華麗なる休暇。

古い友人数名と神保町でカレーを食べようということになり、その話題が出たのはもうけっこう前の話なのだが、ふと思い返すと、なぜカレーを食べることになったのか、まったく思い出せない。いつもこのメンバーで集まるときはテキトーに居酒屋に入るのである。
こういう記憶のいいかげんさも、加齢の影響なのだろうか。まあ、カレーはなかなか美味しかったのだが。

……ここで一番大切なことは、「カレー」と「加齢」をかけているところで、そういうことをやってはいけないと思いつつもついやってしまうのが加齢というものの怖いところだ。

神保町へは駒込駅から歩いて行った。Googleさんの見立てによれば約5キロ。コース的には本郷通りを南下して東京大学が見えたあたりで白山通りに移動し、再び南下すると神保町に着く。このコース上には通っていた小学校中学校高校予備校など、いわゆる母校が点在しているが、その中には東京大学は含まれていない。
寄り道しつつ歩いていたら所要時間は1時間半ほどになった。

白山通りをてくてくと歩いていると、東京ドームシティ・アトラクションズが見えてくる。大変カタカナ率の高いハイカラな名前だが、世代的には旧名の後楽園ゆうえんちのほうがしっくりくる。
通っていた予備校が近かったので、その時期はこの付近を毎日のようにうろついていた。白山通りを自転車で走っていると、街中にいきなり遊園地が現れる。その違和感がけっこう好きだった。

カレーを食べた後は、神田駅まで歩いた。
所要時間はだいたい20分。神田に行く用事があったわけではなく、なんとなくだらだらと歩きたくなったのだ。ちなみに神田にはミデッテという福島県のアンテナショップがあり、熱心に通ったりしているわけではないので大声では言えないが、僕はそこがほんのりと気に入っている。家族に薄皮饅頭でも買って帰るか……というようやことを一瞬思うが、とっくに営業時間外なのであった。

今回集まったのは中学時代の同級生なのだが、このメンバーの中にいる時には自分でも驚くほど口が悪くなる。それどころか、意地悪にもなるし、場合によってはかなりゲスにもなるのだが、ではそれが、「日頃気を使って生きていることへの反動で気兼ねなく素に戻る」ということかというとそうでもなく、いつになく過剰なその状態は、中学時代のノリに戻っているということなのかもしれないし、もしかしたら単にインドのビールに悪酔いしたのかもしれない。歳を取るにつれ、徐々にアルコール耐性は低くなっているから、それはそれでありそうな話で、もしそうだとするならばこれもまた加齢というものの怖いところだ。

アルコールで温まった頬に、冷たい空気があたる。少し視界がクリアになるようでなかなか心地いい。
ふと空を見上げると、ぺかぺかと月がきれいだ。思わず携帯を取り出してシャッターを押したものの、ほんのりとアルコールに支配されている指なんかで、うまく撮れるはずもない。