平熱通信

妄想癖、心配性、よそみがち。

会社でスマートフォンを使うときに注意すること。

それは主に会社で見かける光景で、その時、人は自席でうつむいている。
視線は机上に向かっているのかというとそうではなく、机の端と自分の胴体の中間くらい、つまりは机と身体の間のわずかな隙間にそそがれている。
真下を見るほど首を曲げると、そのシルエットはけっこう不自然になる。

ここまでを整理すると、会社で、自席に座っていて、首を真下に向けて、机と自分の胴体の中間くらいのところを凝視している、ということになる。
それはつまり、こっそりとスマートフォンを見ている人の姿ということになるのだが、僕が通っている会社のように、自席でのスマートフォンの操作が原則禁止というようなところで、時々見かける光景だ。
おおっぴらにスマートフォンを出すわけにいかないので、机上よりも下の、ぱっと見で人目に付かないような位置でこっそりと操作する。その位置なら、まわりの人にも通りすがりの人にも、スマートフォンは見つからないだろうというコンセプトの作戦になる。
たしかにこの作戦ならば、スマートフォンが誰かの目に留まる確率はかなり低いだろう。

なのだけれども。
不覚にも最近ようやく気づいたのだが、この作戦で隠すことができるのはスマートフォンそのものだけであり、禁止されている自席てのスマートフォン操作という行動そのものを隠ぺいできてはいないのである。
なぜなら、作戦実行時は首が不自然に曲がり、なんだか不自然なポーズになっているからだ。

そのポージングを実行している本人にどこまで自覚があるのかわからないが、そのポーズは、見る人が見れば「誰にもバレないように禁止されているスマートフォン操作を行い完全犯罪を成し遂げた気分になっている不自然なポーズでスマートフォンを見ている人」以外の何者でもない。
結局のところ、自分がいったい何を隠したいのか、よく考える必要があるだろう……というか、禁止されていることを不自然なポーズをしてまでこっそりやるのは控えた方がいいような気はする。

朝、はやめに出社すると、フロアの照明が点灯していないことがある。とはいえ少し薄暗く感じるだけで、特に作業に支障はないのだが、そんな中、例の作戦を決行する者がいるとやや空気が変わることがある。

薄暗い中、あの不自然なポーズでスマートフォン操作をすると、傍目には「下腹部から変に光が漏れている人」に見えることがあるのだ。
それは妙に妖しい光景で、そこを一文字になぎ払えばかぐや姫でも出てくるのではないかという気分になる。
出社時に太刀を持たずに来てしまったことを悔やむこともしばしばだ。