平熱通信

妄想癖、心配性、よそみがち。

フェアリーテイルの結末を。

最近また、いわゆる迷惑メールが来るようになった。はてさて何か迷惑メール屋さんの目に留まるようなことをしたのかなと考えてみてももう一つ心当たりがない。そもそも何をしたら目を付けられるのかよくわかっていないのだ。

お金の使い道に困った大富豪がお金をくれるとか、若い女の子が秘密の動画を見せてくれるとか、動画配信サイトの方が無料お試し期間の期限が近いので、このままでは有料契約になってしまいますよと教えてくれるとか、世の中にはずいぶんと親切な人が多いということが、メールを見ているとよくわかる。ただ、言葉づかい、いや、言葉づかいというよりも、言葉と言葉の間に不必要な記号が入っていたり、そもそも日本語としての形がやや崩れていたりするからか、僕のハートをがっちりキャッチするような内容のものを読むことはほとんどない。

今まで届いた迷惑メールでいちばん好きだったものは、妖精と名乗る人からのものだ。いや、仮にも妖精と自称しているのだから、「人」と表現するのは正確ではないかもしれない。
「多分信じてもらえないと思うけど、自分は妖精である」というような自己紹介からはじまるこのメールは、「今、我々の住んでいる妖精の森が大ビンチになっていて、救えるのはあなたしかいない」と訴えていた。
終始文章は読みやすく、妖精の世界の説明もなかなかわかりやすい。なかなか文章の上手な妖精のようなのだ。
そこそこ長いそのメールを読み終わったとき、僕の心を満たしていたのは「堪能」の二文字であった。
ただ「くわしいご相談をしたいのでメールをください」というラストには違和感を感じた。妖精が連絡の手段としてEメールを使ってしまうと、それまでの物語のトーンを変えてしまうのである。
そのへんについてもう一度考慮いただいて、再度投稿願いたいところだ……などと思いつつ、数年経ってしまった。
妖精の森が今どうなっているのか、いまだにちょっと心配になる。