平熱通信

妄想癖、心配性、よそみがち。

パパのレンジは狭いまま。

近所の幼稚園が運動会のようだ。
中から園児の歓声が聞こえてくる。
正門近くをよく見ると、今日が運動会である旨を伝えるポスターが貼ってあり、あわただしく出入りする保護者と思われる人たちの顔もみな晴れやかに笑っている。天気もよく、いわゆる運動会日和といっていいだろう。

ふと、ついこの間、僕もこの保護者の中のひとりだった……みたいなことを考えてしまいそうになるのだが、娘がこの幼稚園に通っていたのはもう10年以上前なのだ。体内を流れる時代感の大ざっぱさにあきれるばかりだが、これは僕だけ、というか、僕が属するであろうズボラ族特有の体質なのだろうか。

そういえば、娘の運動会の時に、運動場内の見回りをする係をやったことがある。それに選ばれた経緯は覚えていないが、3年間の幼稚園生活の中で、持ち回りでなにかの係をやることになっていたのかもしれない。
「まわりの迷惑になるほど大きな脚立を持ち込んで写真を撮っていたり、度を超した大騒ぎをしていたり、泥酔している人がいたら、注意、もしくは、見回り係本部への報告をする」というのが仕事の内容だった。
僕はそれまで、幼稚園児の父親の役割というものについて「娘と遊んでみたり遊ばれてみたり、時々(自分のことは棚に上げて)注意なぞしてみたり、知恵を授けたつもりになったり、一緒に風呂に入って大ボラ話をしたりする」くらいしか想定していなかったので、そこに「酔っぱらいの相手」が含まれることがあるということに少し驚いたような気がする。ただまあ、それは必要な仕事であることに間違いはなく、それなりに場内警備に勤しんだものだ。

僕は朝から飲酒をすることについてはまったく抵抗がないのだが、「とはいえ幼稚園の運動会で泥酔するほど飲むというのはねえ」などと思ってはいて、細い柱に屋根だけついたタイプのテントを設置し、その下でキャンプ用の椅子に座って宴会をしている赤ら顔のグループを発見した時には、まぼろしの珍獣を見つけたような衝撃を受けたものだ。まさか本当にいるとは、という驚きだ。
彼らの設備を観察すると、ランチタイムにはバーベキューをすることが予想される。テント自体は運動場の隅に設置されているのだが、そもそもそれほど広い場所ではなく、個人的には「さすがにバーベキューはちょっと」と思われた。
こういう行事での「何をどこまでやっていいのか」問題は、なかなか取り扱いが難しいものだとは思うものの、運動会では運動している子供を見て「いえーい」とか言いつつ、お昼にはおにぎりを食べたりする、というスタイルが、僕の体には馴染むような気はする(感想は個人の見解です)。
結局、この件については本部に報告したところまでは覚えているのだが、その後の顛末については覚えていない。なんにせよ、大昔の話なのだ。

それはそれとして。
父親の役割、みたいなことを考えると、僕のその後の人生でもその担当範囲はほとんど広がらなかったような気がする。
これはもしかすると、誰かに誤らないといけないようなことなのかもしれない、とも思う。
まあ、身の丈にあった父親活動をしていたらそうなってしまったとも言えるし、それよりもなによりも、何を今さら言っておるんだ、という気がしなくもない。