平熱通信

妄想癖、心配性、よそみがち。

太っててもやせてても。

朝から内科に行く。
服用している薬がなくなったのでもらいに行ったのだ。
医師と短い会話をして、「じゃあ、シャツをめくってください」という指示に従いTシャツをめくる。
聴診器を耳にセットした医師は僕の体をじっと見てはいるのだが、なかなかその先端部を僕の胸にあてようとしない。沈黙の中、シャツをめくって裸体を人にさらすというのはおそらくはじめての経験だと思う。前半分とはいえ、裸の体を人前に露出して、それを中年男性に見つめられる。それも無言で。なんだかものすごく恥ずかしいひとときであった。
しばらく後、医師は静かにこう言ったのであった。

「先月よりも、少しですが太られましたね。ちょっと気に留めておいてください」

Tシャツをめくった体勢のまま、僕は小さく、

「……ハイ」

と言ったのであった。

午後は飲み会である。
昔所属していた会社の元同期と数年ぶりに集まる。
夕方4時半からはじまった飲み会は11時まで続き、これを書いている今、そんな長時間、何を話したのかほとんど覚えていない。
ただ、わりとはっきり覚えているのが待ち合わせ場所で顔をあわせた時のことで、僕の姿を見た同期ふたりは口をそろえてまずこう言ったのだ。

「やせたなあ。大丈夫かよ」

その後に続いた言葉から得た結論としては、数年ぶりに僕の姿を見た人間には、僕の身体は、不健康にやせた人というような印象を与えたらしい。

午前中は医師から午後は元同期から、健康状態について心配されてしまったことになる。まあ、言ってることの方向は反対なんだけど。