平熱通信

妄想癖、心配性、よそみがち。

白黒はっきりできない話。

「フィルム」という言葉から何を連想するかと問われれば、僕などは、写真を撮るためにカメラにセットして使うアレを思い出すのだが、今現在の日本の常識、というか平均値はどのようなことになっているのだろう。
「フィルム……あ、スマートフォンの画面に貼る、保護用の?」
……みたいな感じだったりするのだろうか。いやいやもしかすると、いまやスマートフォンに貼るもののスタンダードはガラスになってしまっているのかもしれない。まあ、個人的にはどちらでもいい話ではある。

まあともかく。
僕が今ここでいうところの「フィルム」とは、写真を撮る用のフィルムのことなのである。

今どき、という言い方をしてはいけないのかもしれないが、どうやらフィルムの新製品が発売されるらしいのだ。
僕自身はもうフィルムを使って写真を撮ることはないのだが、かつてそれなりに面白がってそれを使っていた者としては、ほんのりと喜ばしい事態だ。
フィルムにはフィルムの色合いというか風合いのようなものがあり、たとえば大好きな誰かの写真を撮るというようなときに、ちょっと背景をぼかしてみたりするだけで、「この色この光このぼけみ、も、もしかしたらオレは名人かもしれない」というような勘違いをすることができる。まあ、そういうフィルムっぽい持ち味、つまり「フィルムみ」は今どきのデジカメならかなりいい具合に再現できるのかもしれないけれど、とはいえそういうことでは解決できないような面白味がフィルムにはある(と思う)。

ところでこの新製品なのであるが、メーカーのサイトには、
「黒白フィルム」
と記載されている。
本当に、本当に(と二度繰り返して書いてしまうほど)どうでもいい話なのであるが、こういうフィルムって、昔は、
「白黒フィルム」
と言わなかっただろうか。
いや、どっちでもいい話ではある。ただ単に、ちょっと気になっただけなのだ。
でも、「白黒フィルム」って言わなかったっけ?

「目を白黒させる」
「白黒はっきりさせてやるゼ」

……というような例を思い浮かべると、やはり個人的には「黒白」よりも「白黒」のほうが親近感がある(ちなみに、辞書によれば「白黒はっきりさせる」は、「黒白はっきりさせる」でもいいらしい)。

「黒白」、もしくは「白黒」撮影用のフィルムは英語では「black and white film」と呼ばれるようなので、少なくともフィルムについては「黒白フィルム」という呼び名のほうが正統派、ということになるのだろうか。僕にとってしっくりとくる「白黒フィルム」という言い方が、ある意味方言のようなものだったのかもしれない。

いやまあ、どちらでもいいのだ。どちらでもいいし、それこそ白黒はっきりさせなくてもいいような話ではある。ただ、この件についてもう少しだけ言うと、いわゆる「テレビ」の最初の世代というか、まだカラー表示できなかったころのアレは、
「白黒テレビ」
……と言わなかっただろうか。
だからなんだというのだ、という話かもしれない。それと「black and white film」の日本的な呼び名の件は別の性質の話なのかもしれない。
ただ、ただなんとなく、気になっただけのことなのである。