平熱通信

妄想癖、心配性、よそみがち。

負ける技術(トイプードルに)。

娘の話によると、最近、犬が散歩の途中で、

「もう歩きたくない」

と言うのだそうだ。
ウチの犬は日本語を話したりしないし、娘が犬語を理解するわけでもないのだが、そこそこ長い付き合いの犬と人間の間では、ある程度のコミュニケーションは可能になるものだ。

ただ、「もう歩きたくない」という意思は伝わるものの、その理由の正確なところまではよくわからない。まあ、帰宅してからの様子をみると元気がないとかどこかが痛くて動きたくないとかいうことはなさそうなので、最近の寒さが原因なのかなあ、と推測している。考えてみれば、彼女(我が家の犬は女の子なのだ)は基本的に全裸で活動しているので、「こう寒くてはやってられないわん」と考えているという説にはそれなりに説得力がある。夜、布団の中で寝る率も高くなってきたし。

問題は、彼女が「もう歩きたくない」という状況になると本当に歩かなくなることで、足をふんばり、真剣な眼差しで飼い主の顔を見つめ、「もう、こうなりゃ一歩たりとも」と言うそうだ。とはいえ帰宅しないことには散歩は終わらないわけで、そこをどう理解してもらうのかというあたりが、今後の課題になってくるだろう。

夕方の散歩からの帰宅時、娘は犬を抱えて帰ってきたらしい。
帰宅するなり娘は犬に説教をはじめたのだが、こと娘の言うことに関しては素直に聞くような犬ではなく、そのうち人間対犬という、種族を越えたケンカがはじまった。
犬に目線をあわせ、本気で説教をする娘について、たいしたものだなあと思うのだが、もっとすごいと思うのが、犬とのケンカになった時、ちょいちょい負けているということだ。
彼女(犬のほう)は僕には基本的に従順で、常日頃は温厚でおとなしい性格のはずなのだ。そういう意味で、彼女とケンカをして負けるというのはなかなかの技術のような気がする。ちなみに犬種がトイプードルだ。
とはいえ、彼女がおもちゃで遊ぶ時に、真っ先に娘の方に走っていくところを見ると、仲が悪いとか敵愾心があるとかいうわけでもないようだ。彼女としては、娘のことをワガママが言える姉妹くらいに把握しているのかもしれない。タイ米くらいの大きさの、白くて細長い牙をちらりと見せて娘を威嚇しているところを見ると、なぜかうらやましくなることがある。