平熱通信

妄想癖、心配性、よそみがち。

たとえ拡散されたとしても。

通勤電車で見知らぬ乗客とちょっとしたトラブルになった知人が、いきなり写真に撮られ、その上「拡散するからな」と脅されたそうだ。
そもそも「ちょっとしたトラブル」とはいうものの、知人には心当たりはないそうで、相手からもそれについての明確な説明はなかったそうだ。自分の行いが知らないうちに他人の迷惑になっていることもあるし、その可能性は知人も否定はしていない。ただ、それについての説明はなく、小声でなにやらつぶやいた後にいきなりの撮影&「拡散するからな」だったそうだ。なのでここではトラブルそのものついては触れない。

問題は「拡散するからな」というセリフである。
それについての知人の第一印象は、「だからなんだというのだ」というものだったらしい。たしかに、自分の姿が写った画像がインターネットにばらまかれるのはいい気分はしないし、それなりに恥ずかしいことではある。ただ、その画像にリンクするような詳細な個人情報がもれるわけでもなければ、それはそれだけのことではないか、というのだ。

「拡散するからな」と言われたオレは、いったいに何に対して警戒すればいいのだろうか。という知人の問いに、有効な回答を思いつくことができなかった。たとえば、その画像に「JR○○線に鬼畜発見」というようなタイトルとそれっぽいハッシュタグが添えられてインターネットに放たれたとして、それが一般的な会社員であるところの知人の私生活を脅かす可能性はどれくらいのものなのだろう。いや、脅かす以前に、人の目に触れ、その人になんらかの感想を抱かせる可能性はどれくらいのものなのだろうか。
そこらへんの想像がうまくできないのである。

ところで、「拡散」という言葉を聞くといまだに、「拡散ビーム砲」という連想をしてしまうのは世代特有の病だろうか。ちなみに「拡散ビーム砲」とは、「何の役に立つのかもうひとつよくわからないもの」という意味の言葉である。