平熱通信

妄想癖、心配性、よそみがち。

気まぐれロマンティック。

仕事の都合で帰りが遅くなり、帰宅した時には日付が変わっていた。
遅い夕食を取り、風呂にも入ってしまうと、丑三つ時やや手前、という時間になっていた。いつもなら寝ている時間帯だが、シフト勤務による生活サイクルのずれの影響か、不思議と眠くない。

さてさてどうしたものかな、などと思っていたら娘が自室から飛び出してきた。そして目が合った僕に、焦っている者がよくそうなるような、上ずった口調で彼女が言ったのは、贔屓にしているアニメの続編、専門用語(でもないか)でいうところの2期の製作が決まった、という内容のものであった。
そのアニメとは、ものすごく大ざっぱに言ってしまえば中学生の男女が繰り広げるラブコメで、観ているとどんどんこっぱずかしくなってくるというものだ。イメージとしては甘酸っぱさという言葉が近いような気もするが、僕自身の中学生時代にそのような味覚を刺激された記憶はなく、このアニメで描かれるものは空想上(もしくは妄想上)の甘酸っぱさなのかもしれない。
……というようなことをつらつらと書いてしまうのは、1期が放送されていた頃、娘といっしょに視聴していたからで、毎週のように「中学生女子はたまらんなあお父さん」というようなことを言う娘にどう返答したものか毎週のように困っていたものだ。娘はアニメに登場するかわいい女の子が好きで、趣味嗜好としてはいいとは思うのだが、そこで僕が同調するかどうかというのは別の問題だ。そこで安易に「まあ確かにかわいらしいねえ」などと言ってしまうと、次に待ち構えているのは「あの太ももとか、頬ずりしたくなるよね」という同意を求めるクエスチョンなのだ。
仮に僕が内心で頬ずりをすることを熱く希望していたとしても、それをある意味正直に、包み隠さず女子高生の娘にカミングアウトしてしまうことが本当に「いいこと」なのかどうか、なかなかに悩ましい問題のような気がする。が、そもそもその問題について考えてみるのは、頬ずりに関しての熱い希望を持っているという状態になってからでも遅くはない。今後のことはわからないが、今のところ僕にそういう兆候はない、と思う。
もしかすると娘は、父親が答えに窮するところを楽しもうとして、気まぐれにそういう会話を仕掛けていたのかもしれない。まあなんにせよ、この手の話は僕にとっても面白いことではある。

娘との会話が終わった後、携帯を見ると知人のアナグマさんからLINEが来ていた。以前もらった面白画像が携帯の中で行方不明になってしまったので、確実に自宅にいる深夜に高画質モードで送ってくれるようにお願いしていたのだ。
久々に見るそれらの画像はやはり面白く、こんなもののサムネイルを会社なり電車の中なりで見てしまったら、帰宅するまでとても待てずに即刻ダウンロードしてしまうだろう。アナグマさんプレゼンツの画像は、僕のツボをくいっと押してくる確率がとても高い。

シフト勤務の日は終日損をしたような気分になるのだが(我ながらよろしくない気分だとは思うのだが、おそらく僕は心底不真面目な会社員なのだろう)、娘とアナグマさんのおかげで一気に持ち直したような気がする。わりと素直に、すてたもんじゃない日だな、と思ってしまった。

それはさておき、『からかい上手の高木さん』の2期製作、おめでとうございます。親子で楽しみにしています。
……と、誰にともなくつぶやいてみるのであった。