平熱通信

妄想癖、心配性、よそみがち。

寝ころぶ猫いるねここに。

朝、犬の散歩をしている最中に、とある一軒家の屋根で猫が眠っているところを発見する。
この猫は「ナナさん」といい、結構なご高齢のはずだ。たしか娘の友達で、娘が中学生くらいの時は、犬の散歩の途中でナナさんに会うとそれなりに長話をしていたらしい。どんな話をしているのか興味があったので聞いてみたところ、学校であった事などを聞いてもらっている、という回答があったような気がする。身近なところに自分の話を聞いてくれる人(人?)がいるのはいいことだ。

どういうわけだかこのナナさんのことを我が愛犬は苦手にしていて、視界に入るとなるべく遠ざかろうとする。ナナさんのテリトリーに入ると早歩きになるくらいだから、よほど苦手なんだろうなあ、とは思うものの、小型犬と猫という、それほど大きさに差がない者どうし、できれば仲良くしてくれるとうれしいなあ、と思うのは飼い主の我がままだ。ある日突然、「君と大きさが近いからこのゴリラくんと仲良くしたまえ」などと上司に言われ、隣りの席にゴリラが座ってにっこりとこちらを見てきたりしたらけっこう困るような気がする。最終的には友情を育むことができるかもしれないが、自分以外の動物の生態に詳しいわけでもない一介のサラリーマンがそのゴールに到達するのはけっこう難しそうだ。
ナナさんとしてはウチの犬に興味があるらしく、見つけると近づいてくれるので残念といえば残念なのだが、苦手なものはしょうがない。自分ができそうもないことを犬に強いるわけにはいかない。

では猫を苦手とする我が愛犬が全般的に気が小さく臆病かというとそうでもなく。鳩を見かけると突進するし、自分よりも数倍大きな特定の大型犬に雄叫びをあげてケンカを売りに行ったりもする。
そのあたりの愛犬の心情について、犬猫から同列に扱われているように思われる娘に見解を求めてみたところ、その回答はとてもシンプルなものであった。

「ちょっとおバカさんなんだよ」

なんにしても、丸くなって眠る猫というのはいい。
いつまでも見ていられるような気がする。このまるみは、ある種の完全形なのではないだろうか。その「ある種」というのがどんな種類のものなのかはわからないが。
足早にそこを離れようとする愛犬に引っ張られながら、とりあえず軽く会釈だけしておいた。