平熱通信

妄想癖、心配性、よそみがち。

雨音と早起きとビスケット。

夜中と早朝の間くらいの時刻に目が覚めて、もうすこし眠ろうかいっそ起きてしまおうかなどと考えている時に、それまで静かに降っていた雨が本降りになった。
いきなり大きくなる「さあああああ」という雨音。時々、まとわりつく雨ごと走る自動車の走行音が聞こえる。

ベッドの端、僕の足先のあるあたりで犬が仁王立ちをしている。四本足ですっくと立つその姿を「仁王立ち」といっていいのかどうかよくわからないが、窓の外を見つめるそのまなざしがきりりと男前だったので今回は「仁王立ち」でいこうと思う。ちなみに我が愛犬は女の子だ。

仁王立ちをしている彼女は、さきほどからずっと窓の外を見ている。突然大きくなった雨の音と、むわりと立ちあがってきたその匂いについて「どうしたものか」と思っている……ように見える。喜怒哀楽の少し手前の段階で、この現象をどう扱っていいのか思案しているというような。
今朝の雨は、そういうようなことを思わせるような「セイテンノヘキレキ」感というか「ヤブカラボー」感がある。

声をかけると、彼女は僕の方にやってきた。
横向きに寝て、頬杖をつくような姿勢で手のひらで頭を支えていた(この姿勢って、何か名前は付いてないんですかね)僕の顔のそばで、引き続き窓の外を見ている。ご主人である僕に可能な限り密着したいということで顔のそばに陣取ったんだろうなあとは思われるのだが、やや距離が近すぎて彼女の胴体が僕の呼吸器官をふさぐ(顔面に寄り添いすぎているのだ)。とりあえずがまんできるところまでがまんして、その限界に達したときに彼女には移動してもらった。突然の移動を命じられた(とはいえ数センチだ)彼女はとても不本意そうな顔をしていたが、僕としてもペットのトイプードルが原因で窒息するわけにはいかない。
……いや、いかなる原因でも窒息するわけにはいかないのだろうけど。

僕はベッドから降りて、コーヒーを淹れることにした。彼女も当然ついてくる。
僕と同じタイミングで起床すると、彼女ははやおきビスケットがもらえるのだ。