平熱通信

妄想癖、心配性、よそみがち。

人類未満。

「簡単に手で切れます」と書かれた詰め替え用ボディソープの容器において、液体の注ぎ口が簡単に手で切れなった時、少しがっかりした気持ちになってしまった。

メーカーが「簡単に切れるんだよ」と明言しているものを簡単に切れない。

商品に書かれたこういうコメントは、かなりハードルを下げて書いてあると思われるのだ。器用さレベルがまちまちの消費者に「簡単だよ」と宣言するのであれば、器用さレベルがかなり低い人でも開けられるような注ぎ口にする必要があるだろう。そしてそれが簡単に開けられなかった僕は、メーカーとしては「想定外の器用さレベル」ということになる。
事件は入浴中に発生し、ボディソープが開かないのはけっこう困ったことなので、そこを引っぱれば簡単に切れるはずの注ぎ口の端をがっちりと噛み締めて、本体部分を両手でホールドしつつ「きーっ」と引っ張ったのであった。人類からメモリひとつ分くらいケモノに近づいたような気がした。
そういえば今朝は、安全カミソリで安全にヒゲを剃ることができなかった。僕の唇の左上部には小さなカサブタがワンポイントとしてあしらわれている。

ちなみに、開けることのできなかったボディソープの件についてささやかに補足すると、同じような詰め替えシステムのシャンプー、コンディショナーではこのような事は起きない。あるメーカーのあるボディソープで起きたケモノ化現象なのである。
安全カミソリでカサブタを作った件にしても、相当にレアな事象ではある。

まあ、これまでの人生において、自分のことを器用な人間だと思ったことは(たぶん一度も)ないのだが、こうやって書き出してみると、不器用な人間として公式にお墨付きをもらったような気分になる。不器用界では、そこそこの級なり段なりがもらえそうな自覚もある。
そういえば、これまでの人生において、自分よりも不器用な人間を見た記憶もあまりないような気がする。そもそも友人知人親族縁者が多い方ではないということもあるが、「うわ、こいつ、オレよりも不器用でいやがるw」というようなことを最後に思ったのはいつのことだっただろう。

世の中には、
「アイツ、生き方が不器用なんだよな」
とか、
「自分、不器用ですから」
というような、場合によっては「いい感じ」に聞こえるほうの「不器用」もあり、どうせならそっちがよかったなあ、と憧れたりもする。
僕の不器用は、いってみれば「単なる不器用」で、それはつまり、ただ不器用なだけ、ということになる。

ただ不器用なだけ。

なんとも力が抜けるフレーズだよなあ、と思う。