平熱通信

妄想癖、心配性、よそみがち。

臀部キミのせいだ。

よく言われるところの「ウォシュレット」は商品名で、機械としての名称は温水洗浄便座というらしい。

温水洗浄便座。

まあまあのネーミングだなあとは思うものの、その実態を知らない人が「温水洗浄便座」などと言われたら、「温水で洗浄された便座」と思うかもしれない。
これがたとえば、「温水臀部洗浄便座」という名称ならよりその機能が具体的に伝わるような気もするし、印象もかなり良くなるのではないだろうか。ただこれは僕が個人的に「臀部」という言葉を気に入っているからこそそう思い込んでしまっているのではないかという気もしなくもない。だって、なんか響きがかわいくないですか、「臀部」。臀部、その実態もかわいいし。

我ながら何を書いているのかよくわからなくなってきたが、つまりは「温水洗浄便座」という名前にかすかな不完全さを感じてしまっただけなのである。不完全といってもそれは本当にささやかなもので、実際的な問題はまったくない。
ちなみにこの「不完全さ」についてもう少し書けば、たとえば音声で「オンスイセンジョウベンザ」とだけ聞かされた人が、つい「温水で洗浄された風邪薬」などと誤解する可能性というものも理論上はあり得そうだ……と言いたいところだが、おそらくそういうことはないだろう。それはなぜかといえば、そんな風邪薬、意味がよくわからないからだ。

それはさておき。
我が家の温水洗浄便座が壊れたので、家電量販店に買いに行ったのだ。
「温水洗浄便座を買わねばならぬ」という局面にたたされて気づいたのは、そういえば温水洗浄便座の相場についてあまりうまく予想ができないということだ。まさか数十万もするとは思えないが、千円札数枚では買えないんだろうな、というくらいの、ぼんやりとした印象しかない。
実際に店頭に行ってみるとその印象が大きくズレていないことがわかった。お安いのは1万数千円、お高いのは10万円弱。それぞれの機種について、店員さんにいろいろと説明は受けたものの、それでもお値段の幅の広さにびっくりする。

我が家のメンバーの臀部を温水で洗浄するにあたり、どのランクの温水洗浄便座を選ぶのか。
出せるお金には限りがあるし、仮に予算の制限がなかったとしても、世の中には相応不相応という物差しがあるものだ。せっかく買った温水洗浄便座が分不相応なもので、使ってみて得られた実感が「ダメだ。俺のお尻が負けている」というものだったらとても後悔するだろう。

これは慎重に考える必要があるぞ、などと思案しつつ、最終的には奥さんの直感で、我が家にふさわしいと思われる温水洗浄便座は選ばれたのであった。