平熱通信

妄想癖、心配性、よそみがち。

ゆずこしょうの呼称問題。

ゆずこしょうという調味料にコショウが含まれないことをかねがね不思議に思っていた。

それはつまり、「海ぶどうという食べ物にブドウが入っていなかったり、イヌノフグリという花に犬のふぐりが入っていないのと同じようなものなのか」などと、我ながらわかったようなわからないような推測をしていたのだが、どうやらそういうことではないらしい。

その答えは国語辞書に書いてあったのだが、ゆず胡椒という言葉を辞書で調べるきっかけがよく思い出せない。最初は何か違う言葉を調べようと思って辞書を手に取ってはみたものの、「そういえばあの言葉の意味もよくわからなかったんだよな」というように突発的に他の言葉が気になってしまい、辞書をあちらこちら見ている間に当初の目的を忘れてしまったのだ。これって、辞書をひいているとよくあることだよね……と個人的には思っているのだが、実際のところはどうなんだろう。

ゆずこしょう【柚子胡椒】〔九州北部では唐辛子を「こしょう」とよぶことから〕
調味料の一。熟していない青い柚子と唐辛子(青唐辛子または赤唐辛子)、塩を混ぜ合わせたもの。鍋物や和え物、刺し身の薬味などに利用される。大分県特産。

これはつまり、九州北部では、唐辛子もコショウも同じものとしてあつかっているということなのだろうか。それはつまり、細かいことは気にしない、器の大きな九州男児的なライフスタイルがそうさせているのだろうか。非九州男児であるところの僕などが口出しするのもおこがましいが、個人的な印象としていうと、それはちょっと大ざっぱが過ぎるような気がする。

「唐辛子を「こしょう」とよぶことから……」という解説から読み取れる可能性として、「唐辛子を「こしょう」と呼び、そのかわり、こしょうは別の名前で呼ぶ」という状況も考えられる。そして、もしかしたらその別の名前は「唐辛子」かもしれない。

九州北部では唐辛子を「こしょう」と呼称し、そのかわり、こしょうのことは「唐辛子」と呼称する。

なんだか早口言葉のようだが、可能性としてはあり得なくはない状況である。これはなかなか複雑なことになっている。
たとえば料理をしている時に、こしょうの呼称が原因になって作業に支障をきたし、結果的にそれが致命傷になって失敗してしまう事象が頻発しそうなものだが、九州北部の人々なら、そこでも平然と暮らしていけるのかもしれない。