平熱通信

妄想癖、心配性、よそみがち。

常連さんにはならないで。

薬をもらいに病院に行く。

そこは自宅近くの総合病院で、飲んでいる薬がなくなりそうになると行くことにしている。特に予約はしないが、診察開始時刻の9時に行けば診察と調剤の待ち時間を含めても9時半には帰ることができる。

内科の待合スペースでぼんやりと名前を呼ばれるのを待っていると、「あらー、来たなら声かけてくださいよー、冷たいじゃないですかー」という少し大きめの声が聞こえてきた。反射的に声のしたほうとその声が届いたであろうほうを確認すると、若い女性の看護師がおじいさんに声をかけている。

「入院してたときはあんなに仲良くしてたのに、退院したとたんに冷たいじゃないですかー。来たなら声かけてくださいよー」などと言われているおじいさんも悪い気はしていないようで、しばし雑談は続いた。いわゆる「軽口をたたく」という種類の会話で、会話の内容が子細に聞き取れるほど近くにいたわけではないものの、聞こえてくる声は心地のいいものであった。

会話にしろ文章にしろ、内容がよくわからなかったりつまらなかったりしても、言葉のリズムというか音色みたいなものがよければ気持ちよく受け取ることができる(ような気がする)。

会話の最後に看護師はこう言った。
「また来ることがあったら、今度は遠慮なく声をかけてくださいね。まあ、待ってはいないですけれど」

なるほどそうだよね、と思ったのであった。