日曜の朝、たまーに近所の銭湯に行くことがある。
病気持ちになって以来、安価(ここ重要)で手軽(これも重要)にできる心身の疲労回復法を探っている……というほど熱心でもないのだが、なんとなく「そういや近所に銭湯があったな」というようなことを思いつき、時々通うようになった。
先日の通院で主治医と相談した結果、主治医に紹介状を書いてもらって他の病院に相談に行くことになった。病気持ち歴もそこそこ長くなってきたことだし、今後の治療の方針を考えていくにあたって、ま、ここらでひとつ、他のお医者さんの話も聞いてみようか、という、いわゆるセカンド・オピニオンというやつだ。
大きな浴槽でジェット水流を腰にあてたりしながら、静かに、少しずつ、状況は変化しているねえ、などと思う。
ところでこの銭湯の湯温はあまり高くない。
「火事と喧嘩は江戸の花でい」みたいなことを言うような、昔ながらの銭湯好きのお客さんには文字通り「生ぬるい」のではないだろうか、などと余計な心配をしてしまうマイルドさだ。ただ、僕のような、ちょっと熱めの湯に入るとすぐのぼせてしまうような人間には好都合で、「あんま熱くないよね」などと口ではいいながら、浴槽と足湯を往復するのが僕の入浴スタイルだ。この銭湯に通うメンバーの中で、僕はまだ新参者のほうだと思うのだけれど、せっかく大きな浴槽があるのに足湯占拠率が高いヤツ、という独特のポジションを築いているような気がする。
昨今、若い人たちの間で静かに銭湯ブームが起きている、という話も聞くが、この銭湯に関してはそのブームは到来していないように見える。僕が通っている朝風呂の時間帯ならではの客層なのかもしれないが、集うお客さんは皆それなりに枯れている。たぶん、いつも僕が最年少の客だと思う。
それはそうと。
セカンド・オピニオンというやつをお願いする病院は、今のところ自分で選ぼうと思っている。
今の主治医も候補をひとつ提案してくれたのだが、まあ、自分のことでもあるし、少しは自分で考える時間もあったほうがいいような気がしたのだ。で、選べ切れなかったら、主治医が推薦しているところに行けばいい。
僕の病気は、基本的にはそれなりに高齢の人が患うことが多いらしい。
この銭湯にいる、僕よりもうんと年上のお客さんたちの中に、同じ病気の人はいるのだろうか、みたいなことを左右を見渡しながら考えてみる。考えてみたりはするものの、それはただそれだけの話で、同じ病気の人がいたから(もしくはいなかったから)どうだ、という意見は特にない。
銭湯にいくたびに、体を温めるのはとても心地のいいことだ、と思う。
銭湯の湯にどういう効果があるのかよくは知らないのだけれど、自宅の小さな風呂に入る時よりも体がほくほくするような気がする。いい気分で自宅に帰り、(第3の)ビールを飲みながら録画した映画などを観ていると、はやくも本日が終了したような気分になってくる。
今日は天気も良く、空は気持ちよく青かった。ましてや風呂上りで体がほくほくしているのであれば、当然のように(第3の)ビールを飲んでしまったりする。自分の父親がそうだったから、というだけの理由なのだが、朝から飲酒することに関してまったく抵抗はない。
ちなみにこういう状況のことを、僕はA.B.C.と呼んでいる。これは「朝からビール倶楽部」の略で、アナグマさんという知人が命名したものだ。
このまま時間が過ぎ、それでも天気が崩れなければ、「朝からビール倶楽部」はそのままの略称で「青空ビール倶楽部」に名称変更する。もう少し暖かくなって、話題のウイルスの問題が落ち着いてきたら、のんびりと寝転がれる芝生のある公園かなんかで、ちびちびとビールを飲みたいところだ。
その頃には僕のセカンド・オピニオン問題はどのようなことになっているんだろうなあ、などと思いつつ、ひとまずはミックスナッツを口に放り込むのであった。