「#トイレットペーパー買い占めました。」
……というコメントを読んだ私はどう反応すりゃいいのさ、と娘に言われたのは何週間前のことだっただろうか。
ここのところどうも時間の把握がうまくできなくなっているような気がする。時々、つい最近の出来事がやたらと昔の事のように思えたりする。自宅待機という変わり映えのない生活が続いているせいかもしれないなあなどと思ったりもするのだが、とはいえ普通に出勤していた日々とてそれほど彩りにあふれていたわけでもなかったしなあ、とも思う。あるいは「それほど彩りにあふれていたわけでもない」日々ですら、今よりは多少色味が濃かったのかもしれない。
それはそれとして、上記の「#トイレットペーパー~」というコメントは、あるSNSに、娘のフレンドさんが書き込んだものらしい。「フレンドさんといっても、友達ってわけじゃないんだけどね」というのがなんとも今日的に少しややこしい。
友達ではないフレンドさんは、なぜに「#トイレットペーパー買い占めました。」と、ハッシュタグまで付けてインターネット上に高らかに宣言したのだろうか。
手に入りにくいアイテムを苦労の末に入手したという経験が、彼(だか彼女だか)を高揚させ、さながらゲームの勝者にでもなったような気持ちにさせたのかもしれない。その高揚した気分が、勝者としての「とったどー」的意思表示をさせたということは充分考えられそうだ。
……というような内容の会話を娘としたような気がする。そして、その会話を締めくくった彼女の結論は、
「基本、放置ということで」
だったはずだ。
ちなみに、僕が住む町ではようやくそれほど苦労せずにトイレットペーパーを買うことができるようになった。
「それほど苦労せず」という状況をもう少し詳しくいえば、スーパーやドラッグストアを3店舗くらいまわれば手に入る程度、になる。
現在、ハンドソープは相当なレアアイテムで、マスクはその上のもはや伝説のアイテムだ。
そもそもこの町は、有事の際にはきっちり米が店頭から消えるようなところなのである。去年の台風襲来の時もそうだったし、コロナ禍突入当初もそうだった。
トイレットペーパーが手に入らなかった時期は、クッキングペーパーやクッキングシートなど、売り場が近いものがごっそり品切れになっていた。クッキングペーパーはともかく、あわててクッキングシートを買い漁る意味についてスーパーの店頭でしばし考え込んだのはいつのことだっただろうか。
ウソみたいだろ。東京なんだぜ。これで……。
どういうわけか、僕の頭の中で、三ツ矢雄二の声でこんなセリフが聞こえてきたのであった。