平熱通信

妄想癖、心配性、よそみがち。

省エネ大賞個人部門。

ああ、はい。そうです。たしかに受賞しました。
いや、たしかにね、僕も意外だなあとは思ったんです。あれって、なんというか、人間がもらう賞だと思ってなかったんで。
でもね、先週、現に電話がかかってきて、担当の方が、「おめでとうございます! あなたが、今年の省エネ大賞に選ばれました!」なんて言うもんだから、こちらとしても思わず、「ありがとうございました!」なんて即答しちゃって。ええ。

まあ、省エネ大賞って賞があるのは知ってたし。あれって人間を対象として賞だっけ、みたいな疑問はなくもなかったんだけど、このご時世ですからね。もらえるものはもらっとけ、みたいなことも考えちゃったんですよね(笑)。

もちろん、受賞の理由は聞きましたよ。正直、あまり身に覚えもなかったから。そしたら、なんか、「乏しいリソースで今年を生きながらえたから」とか言われましたね。「乏しいリソース」って、お金のことかよ! とか思って、ちょっとカチンときたんですけど(笑)。

でもまあ確かにね、コロナの影響で仕事は減ったから、お給料は上がらないし、在宅勤務をはじめたのはいいんだけど、ちょっとヘマしちゃって減俸になるし、お金の面でいい話はなかったかなあ。それでもまあ、毎月お給料をもらえる仕事だからね、まだいいほうかもしれないけど。
え、ヘマした話? 言ってもいいけど、そんなに面白い話でもないですよ。仕事でパソコン使うんだけど、パスワードがわからなくなったとか、そういう系の話。いわゆるテレワークってやつで今は仕事をしてるんだけど、パソコンやらネットワークやら、やたらパスワードを入れるんですよね。でもさあ、パソコンのスイッチを入れてから、仕事をはじめるまで7つもパスワードを入れるんですよ。なんか多すぎるなって気がしませんか(笑)?

「乏しいリソース」っていえば、今年はわりとたくさん病院に行ったりして、ちょっと寝込んだりしてた時期もあったから、体力は乏しかったと言ってもいいかもしれません。
その割にはっていうか、まあ、クビにならない程度には仕事はしてたし、なんとか一般市民として生活できていたような気はします。といってもねえ、もっと大変な状況で過ごしている人もいっぱいいるとは思うんですよね。僕がピックアップされるのもどうかなあ、という気はしてます。
でもまあ、このご時世ですからね。もらえるものはもらっとけ、みたいな(笑)。

ええ、たしか、記念品としてメダルが送られてくるって言われました。直径20センチの金色のメダルで、中に省エネの「省」の字が入ってるらしいです。フォントが選べたから、明朝体にしてもらいました。ゴシックよりも格式高いかなと思って。
オプションで、メダルのまわりにひまわりみたいな花びらを付けられるって言われたんですけど、それはお断りしました。花びらって、ねえ(笑)。
首から下げるためのリボンは、赤らしいです。幅は5センチだったかな。

え、ちょっと、いきなり何を言い出すんですか。
いやいやいやいや。さすがにそういうサギっぽいのにはひっかからないですよ。わりと用心深いほうだし。
なんかイヤな言い方しますね。もちろん、それくらいは確認してますよ。メモだってしてあるし。電話してきた人は、たしかに「省エネ大賞友の会」って名乗ってました。
え、「一般財団法人省エネルギーセンター」って何ですか。いやいやそれはないですよ。その、一般財団なんとかセンターが、省エネ大賞を選出している機関だって言いたいわけですか。そんなバカな話はないですって。だいたい、なんか名前の響きがうさんくさくないですか、「一般財団法人省エネルギーセンター」なんて。いかにも架空っぽいっていうか、でっち上げ感がするというか。

……。

それもそうなんですけど、そもそも、あなた、どなたでしたっけ。
この電話って、僕からかけました? それとも、あなたからかけてきたんだっけ。

すみませーん。なんか、声がぼやけてきて、よく聞こえないんですけど。
なんか、照明も明るくなってきたなあ。
イヤな予感がしてきたなあ。
これ、もしかしたら夢の中なんじゃないの? たまに見る、自分の意識がはっきりとある夢。そういう夢から覚める時の感じにすごく似てるんだけど。
ああ、どんどん明るくなっていく。

え、じゃあ、結局のところ、僕、省エネ大賞、取ってないの?
金のメダル……もらえないの?

直径20センチの……。

実際の省エネ大賞は残念ながら受賞できなかったので、目覚めた後で、僕の想像の世界で勝手にいただきました。

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