平熱通信

妄想癖、心配性、よそみがち。

ノート

ダリンダリンダ。

とあるマンションのそばに、ワンボックスカーが止めてあり、そのマンションから出てきた男がふたり、車の中に荷物を運びこんでいる。僕は、男たちが運び込んでいるものの名前が思い出せず、あれ、なんだったっけな、と考える。 車の中にはすでに別の物が置か…

白い眼鏡。

比較的高い年齢層のメンバーの中で仕事をしているということもあって、世の中の流行り廃りみたいなところが疎くなっている……という風に書いてしまうのも問題があるのかもしれないが、少なくともまあ、職場の僕のまわりの状況はそんな感じなのである。 もちろ…

眠れぬ夜のために。

どうしても眠れない夜、というものがたまにある。頻度としては年に数回。子供の頃から延々と続く、困った不定期イベントだ。どこかが痛かったり苦しかったりするわけではないのだが、ただただ眠れない。 眠れないなら起きているしかないのだが、一日分の疲れ…

海を見にいく。

海岸沿いを、海を見ながら歩きたい。 ふとそんなことを思い、電車に乗って海を目指す。 海に向かう電車はあまり混んでいない。この電車はいくつかの都内の代表的な大型駅に停車するので、観光目的の乗客以外に、普通に通勤で使う人も使っている。一応、通勤…

夏のピークの火事のこと。

夕方が終わり、そろそろ夜になりますよ、という時間帯に、突然、火災報知器の音が聞こえてきた。まあ、「突然」とは書いたものの、事前に予告してから鳴る火災報知器というものもないような気はする。 僕の住む地域は、小さなマンションやら一戸建ての住宅や…

それはまるで物語のような。

僕の住む町から一番近い繁華街に新しくできた映画館に行ってみる。 なんでも国内最大級のスクリーンが自慢なのだそうだ。この映画が観たい、というより、その映画館の巨大スクリーンを見てみたい、という動機で上映スケジュールを確認してみると、たまたまそ…

夏度数はこれくらい。

夜になると犬がベッドに上がってきて、先に横になっている僕に寄り添うように眠るようになった。季節は秋に移りつつあるということなのだろう。ただ、しばらくすると「まだくっついて寝るには暑いわん」とかなんとか言いながらベッドを下り、床の上に移動し…

起きなかった惨劇と僕のささやかな敗北感。

テレビのニュースから聞こえてきた「店員をオカズに……」というアナウンサーの声に、宮沢賢治の『注文の多い料理店』をふと思い出し、なにやらとても猟奇的な事件が起きたのではないかとドキドキする。その時、頭の中に流れていたセリフは、 「おい店長。あそ…

『天気の子』の最後の部分について。

スタッフロールとかエンドクレジットとかいわれる例のあれ、映画が終わる時にスタッフやキャストの名前が流れるように表示されるあの時間帯の最後には、その映画の監督の名前が表示されることが多い。 スクリーン下方から監督の名前が登場する時に、「そのま…

中年サラリーマンが足を触られるとはどういうことなのか。

会社からの帰り道、通勤電車の中で、隣に座っていたおじいさんに足を触られる。 もう少し詳しく書くと、それまでずっとうつらうつらと眠っていたおじいさんがふと目を覚まし、突然、僕の足を触ったのである。その電車に僕が乗ったとき、おじいさんはロングシ…

臀部キミのせいだ。

よく言われるところの「ウォシュレット」は商品名で、機械としての名称は温水洗浄便座というらしい。 温水洗浄便座。 まあまあのネーミングだなあとは思うものの、その実態を知らない人が「温水洗浄便座」などと言われたら、「温水で洗浄された便座」と思う…

通勤経路が危険地帯。

暑かろうがなんだろうが、サラリーマンなので会社には行かねばならぬ。 それはしょうがない。それはそういうものだ。 「なんか暑いので今日は休みます」 ……なんとなく、一度くらいは言ってみたいような気持ちにならなくもないが、そこはそれぐっとがまんして…

夏の散歩にビスケット。

いやしかし暑い。 外を歩いていると、熱せられた空気のかたまりが体にぼうんぼうんと体当たりをかましてくるような、まさに猛暑本番! という暑さである。 この暑さは地上に住む者に平等にダメージを与え……いや、そんなに大げさな話でもないのだけれど、この…

夏のせい。

ここのところの急な暑さにすっかりとやられてしまい、朝、通勤するだけでもうふらふらである。 出社後、汗がたらたら流れる後頭部をタオルでぬぐいながら水を飲む。もう一日の体力をほとんど使い切ってしまったのではないか、という恐れのようなものを感じ、…

すばやくなりたい。

「こころ」と入力した文字を漢字に変換しようとしたところ、その変換候補の筆頭に「ココロ」というカタカナが表示されてなんか照れる。 ここに表示されるということは、過去に「こころ」を「ココロ」に変換したことがあり、それを覚えていた我がiPhoneが「わ…

その笑顔の行き先は。

通勤途中のとある路地に、小さなアパートがある。そこはたしか女子専用で、外観はいかにも昭和のアパートっぽいのだが、小洒落たカタカナの名前が付いている。 僕がそのアパートのわきを通ったとき、ちょうどその建物から女の子が飛び出してきた。彼女はしば…

手足のおもり、恋するおもい。

公園の中を、颯爽と走り抜けていった男の人の両手には小さな鉄アレイが握られていたのであった。そうやって走ることでより効率的な筋力アップが望めるということなのだろうか。鉄アレイを除いたスタイルはジョギングする人そのものなので、僕がひいふう言い…

わたしのことがわからない。

最近はどういうわけか落語ばかり聞いている。 朝起きると録画しておいたテレビ番組の落語を観て、通勤の時もスマートフォンで落語を聞く。寝る前だって同じことで、落語を聞きながら眠るのである。 落語を聞くのはもともと好きなのだが、最近はその量が尋常…

ピョン吉以外の平面ガエル。

昨夜からの雨が降り続くようなこんな朝は、いつもより少しはやく玄関を出ることにしている。 傘をさすと晴れている日よりもはやく歩けないということもあるのだけれど、それよりもなによりも、カエルを警戒しないとならぬのだ。 僕の住む町には、雨が降ると…

太っててもやせてても。

朝から内科に行く。 服用している薬がなくなったのでもらいに行ったのだ。 医師と短い会話をして、「じゃあ、シャツをめくってください」という指示に従いTシャツをめくる。 聴診器を耳にセットした医師は僕の体をじっと見てはいるのだが、なかなかその先端…

最終的にはクライベイビー。

会社に行く途中、歩きながら聞いていた落語がなかなかいい話で、不覚にも少し涙が出てしまった。 ぽろぽろとこぼれてくる、というような量でもなかったので、そのままほったらかして歩いていたのだが、僕は涙を流すと顔が大げさに赤くなる傾向があるので、付…

トイレの中の名セリフ。

会社のトイレの個室に貼られた「ボタンは長押し」という注意書きについて、何かひっかかるものを感じていたのだ。 その「ひっかかるもの」は、注意の内容についてのものではない。 ビルの高層階にあるトイレの場合、水を流すためのボタンを長めに押さないと…

対決モスキート。

部屋の中に蚊が出没するようになり、僕の睡眠を妨げるようになった。 この部屋に住むようになってかなりの年月を過ごしてきたが、蚊が出たのは今シーズンが初めてかもしれない。 明日も仕事だ、そろそろ寝なくてはならない、という頃合いに聞こえてくるあの…

やぶけたジーンズ穿き続けていいのか問題。

犬と散歩をしている途中、履いていたジーンズがやぶけた。 我が愛犬にとって散歩時の必須最優先ミッションであるところの排泄行為が終わり、「本日の作品(朝の部)」をピックアップしようとしゃがんだはずみで、左の膝部分がびりりと裂けたのである。もう何…

おおむね気分はライトグレー。

インターネットをふらふらとさまよっていると、さまざまな人が書いたさまざまな言葉に出会うことになり、それらを読んでいると、世の中には、うまいことを言いたい人がとても多いんだなあ、ということをしみじみと思う。 ……いや、うまいことを言いたい、とい…

人類未満。

「簡単に手で切れます」と書かれた詰め替え用ボディソープの容器において、液体の注ぎ口が簡単に手で切れなった時、少しがっかりした気持ちになってしまった。 メーカーが「簡単に切れるんだよ」と明言しているものを簡単に切れない。 商品に書かれたこうい…

白黒はっきりできない話。

「フィルム」という言葉から何を連想するかと問われれば、僕などは、写真を撮るためにカメラにセットして使うアレを思い出すのだが、今現在の日本の常識、というか平均値はどのようなことになっているのだろう。 「フィルム……あ、スマートフォンの画面に貼る…

よくも悪くもルーティンワーク。

今日に限って、乗った電車がふたつともまったく遅れたり止まったりしなかった。朝の時間帯は乗降客が多いこともあり、電車の走行に影響するようなアクシデントが起きる確率が高い。なのでいつものように、ちょっとはやめに自宅を出たところ、検査予定時刻よ…

タフでハードな一大事。

会社のトイレで用を足していた時のことである。 僕の立つ位置の背面にある個室から、ずっといびきが聞こえていたのだ。その音量はそれなりに大きく、狭い個室から発せられているからか低く響いていた。 僕は、それについて、「会社のトイレでよく眠れるもの…

Signage! Signage!! Signage!!!(英単語を3回くり返して書くとカッコよくなると信じている世代)

通勤途中の乗り換え駅で、突然聞こえてきた若い女性の泣き声は、早朝の構内に響きわたったのであった。 その声は、基本的に知らない人に積極的に声をかけられない僕のような人間ですら心配になってくるような悲しそうなものであった。そう思うのは僕だけでは…